ヒューリックの原点と現在、そして未来 #2 ヒューリックにとっての“ブランド”とは

2006年にヒューリック(旧・日本橋興業)社長へ就任し、変革期をけん引した西浦氏(現・代表取締役会長)。西浦氏の社長就任当時、社名変更・VI開発を担当したグラムコの山田が18年の時を超え、お話をうかがいました。第1回では当時の意思決定の背景から、躍進の要因を、第2回では、ブランドの本質、そしてこれからの10年に向けたヒューリックの未来像についてお話いただきました。

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社名変更とVI開発という“第二創業”を経て、ヒューリックはその後わずか数年で東証一部上場を果たし、不動産業界でも屈指の成長企業へと歩みを進めていきます。
第2回では、西浦会長がどのような視点で経営の舵を取り、急成長を支えたのか、そして今まさに直面する社会構造の変化をどう読み解き、未来のヒューリックをどのように描いているのかを伺います。
ヒューリックの急成長の源泉と、人口減少社会を見据えた「不動産の商社化」という新たな挑戦。さらに「ブランドとは、安全・安心、そして約束を守ること」という独自のブランド観に迫ります。10年後のヒューリック像と、そこで働く人に求められる「先を読む力」についてもお話を伺いました。

 急成長を支えた“バランス経営”


―― 富士銀行の店舗ビル管理会社として1957年に設立された日本橋興業が、みずほ銀行グループから独立され、2007年に商号をヒューリックに変更されてわずか1年で、東証一部(現・プライム市場)に上場。不動産業界で純利益・時価総額で4位、総資産5位、売上高8位と、破竹の勢いで業績・事業を伸ばしてこられましたが、その成長の原動力は何だったのでしょうか。

西浦: よく“反骨心”などと書かれますが、私はそんなつもりはありません。ただ、「この会社を絶対に潰してはいけない」という想いは強く持っていました。
そして、経営で大切にしてきたのは「利益」「格付」「PBR」「ROE」「SDGs」、これらをバランスよく伸ばすことです。どれか一つだけ突出しても意味がありません。バランス経営が財務の強さにつながっています。

西浦氏
ヒューリック株式会社 代表取締役会長 西浦三郎氏

―― 企業として社会やステークホルダーに対し、意識していることは何でしょうか?

西浦: 社員とかステークホルダーに対して何ができるのかを常に意識しています。環境対応では、カーボンゼロを自社ビル260棟全てで目標に掲げ、2029年には実現する予定にしています。それから、お客様に対しては安全・安心の提供が最優先ですので、今は震度7に耐えられ、富士山の噴火が起こっても大丈夫なように、全部の建物で電気系統の設置位置を整備するなどして対応しています。
そのほかにも、線状降水帯による豪雨対策や、毎年上昇し続ける平均気温とそのことによるCO2排出量の増加など、様々な問題が起こっていますが、これらへの対策を講じるために、年間300億円ほどの予算を確保しています。お客様やステークホルダーに対して、私たちは対策を講じていく義務があるのです。
また、地域に対しても、できる貢献はしたいと考えています。例えば本社がある地域に神輿も寄進していますし、子供たちに集まってもらって夏祭りを催したりもしています。それに、本社ビルには保育園を開設していますが、社員でなくても空きがあれば入園していただけることにしています。

―― 社名を変更された時の、「人」に焦点をあて、街をつくり、人の暮らしをつくる、豊かにする仕事がしたい、そういう会社にしたいという思いが今に繋がっているのですね。

不動産の“商社化”1,150万人減時代の事業成長戦略

―― 高級旅館「ふふ」やゲートホテル、こども教育事業、環境事業、高齢者施設の食の改革などの多角化の背景にはどのような課題意識があったのでしょうか。

西浦: これから15年で、労働人口が1,150万人減ると言われています。今でさえ、どの産業もすでに「人が足りない」と言っているのに、ここからさらに減るわけです。オフィスも物流も高齢者施設も、従来通りの拡大は望めません。この様な状況を踏まえ、私たちは「不動産の商社化」を考えています。
「不動産の商社化」とは建物だけでなく、その中に生まれる価値まで創ることを私たちはこう呼んでいるのですが、例えば、介護施設であれば、入居者が満足できる美味しい冷凍食品を提供する企業に3食の提供を依頼することで、施設で働く料理人の人材不足を補えると同時に、その食品会社の価値を高めることもできます。こども教育事業なら、現在両親とも働いている若い世代が8割以上を占めていますので、子供の習い事や小児科が1カ所に集まる、「こどもでぱーと」と呼ばれる施設があったら、親御さんの負担は軽減され、そこに入居する教育施設、医療機関にとっても、新しいアプローチが試せる場所となります。そして、私たちもこれまで関係のなかった業界との繋がりが生まれていくというわけです。
今後、社会はこれまでと同じように進むかどうかは分かりません。けれども、物理的にも精神的にも豊かな状態を保てるためのバックアップをしていく事業を考えていくのが、私たちの仕事だと思っています。

ヒューリックにとっての“ブランド”とは何か

―― 現在ブランド戦略、ブランドの認知・浸透には何かなさっておられますか?

西浦: 今は都内の地下鉄全ての路線に広告を出しています。あとは、先ほどもお話ししました、自社が保有するビルへのビルボード設置です。
私たちのビルは主に首都圏で駅近のビルになりますので、結構目にしていただけているのではないでしょうか。銀座の持ちビル数では私たちが大手不動産の中でも一番多く、それだけビルボードの数も多いわけです。
現在は持ちビルの9割が首都圏に集中しているので、関西での知名度はそれほど高くはありません。しかし京都大学など関西の大学からの新入社員も多いことを考えると、業界に興味のある学生の間では全国的に知名度が高まっているのではないでしょうか。

ヒューリック株式会社 ビルボード(壁面サイン)
ヒューリック株式会社 ビルボード(壁面サイン)

―― ヒューリックにとって「ブランド」とはどういう意味がありますか。

西浦: 私たちはブランドとは、「安全・安心」そして「約束を守ること」だと考えています。
例えば、社員が交わした約束であれば、会社にとって不利でも必ず履行します。たとえそれが赤字になってもです。
社内には3つの姿勢を伝えています。
「正直でいる」
「常に当事者意識を持つ」
「先を読む仕事をする」
正直でいること、これが意外に難しいですね。ひとつ誤魔化そうとしたら、必ずそこから綻びを生じます。ひとつ誤魔化したら、そこから次々と嘘をつかないと辻褄が合わなくなるんです。
当事者意識を持つということは、例えばゴミが落ちていたとき、お掃除の方が片付けてくれるからと放っておくのではなく、自分で片付ける。
そして、先を読む仕事は、これからの社会で自分たちは何ができるか、何をすべきかを考え、行動していくこと。
これらを積み重ねることで、初めてブランドが生まれて育つのだと思っています。

 10年後のヒューリック“先を読む力”を持つ組織へ

―― 10年後、ヒューリックはどんな企業であってほしいとお考えですか。 

西浦: 結局はこれに尽きます。
「社員一人ひとりが“先を読む力”を持っている企業であること」
社会構造が変わっていくなかで、この力こそが企業を存続させる原動力になります。そして私はよく社員にこう言っています。
「給料は社長からもらっているのではない。お客様からいただいているんだ」
この原点を忘れなければ、きっとヒューリックはこれから先も必要とされる企業であり続けるはずです。

グラムコがヒューリック様の新社名およびロゴ制作プロジェクトに携わらせていただいたのは18年も前のことですが、当時、西浦さんや役員の皆さん、そして社員の皆さんの思いや希望を伺い、それらをしっかりと反映させた社名やロゴをご一緒に作り上げていったことを思い出します。
今回お話を伺い、大きな変化を遂げたきっかけにもなった「社名変更」や「VI開発」に携われたことを、改めて光栄に思いました。
ありがとうございました。

ロゴ前での画像

右:ヒューリック株式会社 代表取締役会長 西浦三郎氏 左:弊社代表取締役会長 山田敦郎

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