下間 彩子(Ayako Shimotsuma)
コンサルティングディレクター
2005年
グラムコ入社
「ブランディングはロゴや広告をつくることではない。ステークホルダーとの情緒的なつながりを戦略的につくっていくこと。」 2005年の入社以来、21年間にわたり製造業やサービス業、官公庁、大学など、数多くのブランディングを手がけてきた下間はそう語ります。その言葉の裏には、数え切れない試行錯誤、現場での発見、クライアントとの真剣な対話がありました。本連載では、下間彩子が21年間の現場で培った実践知を、3回にわたってじっくりと紹介します。
Gramco Insights 08
―― まずは下間さんのキャリアと、ブランディングとの出会いについて教えてください。
下間: 前職はサービス業の会社に勤めていました。そこで新しいブランドを立ち上げるプロジェクトが発足し、そのメンバーに選ばれました。当時はブランドについて深く考えたこともなかったので、「ブランディングってなに?」からのスタートでした。
プロジェクトでは、ターゲットや提供価値など、考えることはたくさんありましたが、正直最初はあまりピンときていませんでした。しかし周りの話や書籍などから学び、「ああ、ブランディングって見た目だけではなく、ブランドそのもののあり方を問う、もっと大きなテーマなんだ」と気づき、どんどん面白くなっていきました。
ちょうどその頃、当社代表の書籍を読んだのも大きかったです。「こんなにもその会社やブランドに影響を与えられる仕事があるんだ」と衝撃を受けました。
その後、転職を考えたときに思い出したのがその本で、「ブランディングを専門にやってみたい」と思い、応募しました。
入社し、実際のプロジェクトに入ってからは、ブランディングの奥深さを思い知りました。表面的な理解だけでは、本当のブランディングはできないと痛感しました。それでも、わからないなりに「これは絶対面白い」と思えた自分の直感は間違っていなかったです。そこから先の21年間は、現場で学び続ける日々です。
―― 21年間で特に印象に残っているプロジェクトはありますか。
下間: いくつもありますが、真っ先に思い出すのは、入社1年目で取り組んだ内閣府の離島ブランディングプロジェクトです。沖縄県の離島を対象にしたもので、社内にも前例がなく、当社の既存フォーマットにも当てはまらない。まさにゼロから考える必要がありました。
さらに、戦略を考えるだけでなく、各分野の専門家で構成される委員会の取りまとめや関係各所への連絡など、事務局業務もこなさなければなりませんでした。1年目の自分には荷が重いと感じるほどでしたが、沖縄の離島のこと、各分野の専門家たちのアプローチ、国の事業の仕組みなどを知るとても貴重な経験となりました
―― スムーズに進んだ案件はありますか?やはり楽しいものなのでしょうか。
下間: スムーズに進む案件はもちろんあります。でも「スムーズだから楽しい」ということはあまりないかも知れません。どんな案件でも高いクオリティのアウトプットは必要で、プレッシャーは常にあります。ただ、デザインの力を感じられる瞬間は「楽しいな」と思います。これまで議論を重ねてきたことが可視化され、可能性や選択肢が目の前に提示された時、クライアントの目がきらきら輝いているように見えます。そんな時はデザインってすごいなと改めて思いますし、デザイナーがちょっと羨ましいです。
―― ブランド戦略とは何か、下間さんの定義を聞かせてください。
下間: ブランド=ブランディングと置き換えてお話しますが、ブランディングとはステークホルダーとの情緒的なつながりをつくる営み。そして戦略とは、長期的な目標を達成するための大きな方向性や計画。ですので、ブランド戦略とは「ステークホルダーとの情緒的なつながりをつくるための大きな方向性を決めること」と言えます。
つまり、ステークホルダーとの情緒的なつながりをどうつくるのか、というストーリーを決めることであり、当社ではこれをブランドコンセプトと呼んでいます。ステークホルダーからどんなブランドだと思われたいか、共感してもらえるポイントをどこに定めるのか。そうした大きな方向性=ブランドコンセプトが定まると、そうするために何をすべきか、という戦術、施策が決まり、事業への落とし込みからコミュニケーションまで、あらゆる活動が一本筋の通ったものになります。
―― ブランド戦略と経営戦略の関係はどのようにお考えですか。
下間: 個人的にはブランド戦略は、経営戦略の“心臓部”だと思っています。経営戦略は、持続的な成長のために「どの市場で戦うのか」「どんな事業を伸ばすか」という司令部のような役割だとすると、ブランド戦略はその根底にある「何のためにやっているのか」「そもそもどんな存在でありたいのか」「どんな価値を提供して社会とつながるのか」という問いに答えるものです。
どんなに正しい指令でも心が動かない限り、人、そしてその集合体である組織は、本当の意味では動いてはくれません。ブランド戦略は経営戦略に血を通わせ、体温を与えるもの、人や組織の感情と行動につながるもの、なのかもしれません。
◇
第1回では、下間がブランディングと出会ったきっかけから、ブランド戦略の本質、そして経営戦略との関係について伺いました。次回の第2回では実際のプロジェクトの現場でどのように戦略が立ち上がり、クライアントとともに歩んでいくのかを深堀していきます。

コンサルティングディレクター
2005年
グラムコ入社